園児の成長に合わせた具体的な食具・食器の選び方

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食器プロPlusキッズ!コラム

成長に合わせた

食具・食器の選び方

乳児期(初期から後期)について

離乳食スプーンを介してはじめて離乳食を「ごくん」と飲み込む体験をスタートさせ、様々な味(特に5つの基本味の経験)や食感などの違いを経験させる離乳初期において、スプーンの選択は重要です。離乳食スプーン(フィーディングスプーン)はそっと乳児の下唇にあてた後すっとまっすぐ引けるような形状が望ましいため、ティースプーンよりも浅い構造のものが望まれます。その後、徐々に窪みのあるスプーンで柔らかめのものを前歯でかじりとらせるように食べさせていくので、スプーンは成長に応じて変化させる必要があります。この時期の食事は、まだ食器や食具を手に持たず、保育者が食べさせる支援がメインとなります。食事の量も多くはないので、使用する器については、主菜や副菜は小皿のようなものが使いやすいですね。

まずは「ごくん」から

離乳初期・中期のスプーン

ニーズに応じて預かり月齢も早い時期から保育の受け入れをする施設もあります。離乳食期ごとに応じたスプーンを用意してあげましょう。離乳初期・中期の乳児には平らなスプーンが望ましいです。また自分で使うのではなく、保育者が使用するので大人が持ちやすいデザインがいいでしょう。デザイン性を求めると木製スプーンという選択肢もありますが、給食管理の観点から食洗機や消毒に適さない材質もあるので管理の仕方に工夫と衛生管理の徹底が求められます。

離乳後期のスプーン

窪みのあるスプーンで一口の量もより増えていきます。自分で持ちたがることも増えるので多めに揃えておくと良いでしょう。なお、スプーンをテーブルにぶつけて壊すこともあるので、材質についても特徴を踏まえて検討するのが良いと思います。耐久性が良いステンレスなどの金属はお口に触れた時にひんやり感を感じやすいことがあります。温度に敏感なお子さんなどは非金属(樹脂製など)の方が良いでしょう。

上手持ちは一人で食べられる第一歩

乳児期(後期から完了期)について

3回食のリズムが整う時期になると、そろそろ手づかみ食べを十分に経験させたい頃です。手づかみ食べをするには、プレート皿、もしくはランチプレートのように平たいものが便利です。子どもの食事に対しての興味もより高くなるでしょう。自分で食べてみたいという気持ちが先行し、食器を持ち上げたりすることがあるかもしれません。また手づかみした食べ物を別の容器においてみたり、ぐちゃぐちゃと握るといった行動なども起こるでしょう。これらの行動は大人から見たら「遊び食べ」と捉えられることも多く保護者の悩み事としてもよく相談されるケースですが、これも成長の証です。保育者としては一人で食べるためのステップの一つとして、焦らずに見守っていきたいものです。

また、だんだんとスプーンを持つ練習も進めていきます。最初は上から掴むような「上手持ち」から始まり、次に「下手持ち」と変化させるように促し、お絵かきなどの遊びを通して握る練習を並行しながらスプーンも「鉛筆持ち」できるように進めていきます。成長に応じてスプーンの握り位置が変わっていきますのでそれらの持ち方が支援できるような形状のものが良いでしょう。握る部分のサイズ感や重さなど、最近はメーカーの工夫が商品に活かされているので色々と探してみると良いですね。中には保護者も実際に同じものを使ってみたいと思わせるデザインのものも豊富に展開されています。

幼児期のスプーン&フォーク

スプーンをはじめ、フォークの取り扱いにもどんどん挑戦していく時期です。

  • スプーン
    • まだ握る力が弱いので、柄が細すぎないものが良いでしょう。最初は5本の指を全部使って親指以外の指は上から押さえる形です。4本分の指をおく部分は優しい素材で覆われていることも選択のポイントです。スプーン幅は口の幅より少し小さめを目安にし、深さがあるとすくったものがこぼれにくくなります。

鉛筆持ちができるようになれば、カレーライスなど一度にたくさん頬張りたい時にレンゲタイプもあると便利かもしれません。献立によって食具を整えてあげたいものですね。

  • フォーク
    • 硬さのあるものを刺して口元に持っていきやすくなり、主菜を食べる時などに便利です。まだ上手に持つためには練習が必要なのであまり尖ったものだと危険です。先端の刺す部分が2cmほどに設計され、一気に口の中に食べ物を入れすぎないように、喉元など奥まで頬張らないような工夫がされたものが良いでしょう。

お弁当などによく使われるピックなども最近は安全性に配慮された商品も出てきていますが、先端部分が少し丸まっている形状や誤飲しない大きさのものが良いと思います。

幼児期(初期〜3歳ごろまで)について

手づかみ食べから始まった「一人で食べるためのステップ」は、やがてたくさんの失敗を重ねたのちに鉛筆持ちでスプーンを持つまでに成長していきます。家庭でも家族と一緒の食事をとり分けて食べる機会が増えるなど、大人と近いスタイルで食事をする経験が増えていきます。
ワンプレートのような器以外にも主食・主菜・汁碗や副菜、そしてデザートなど多種の献立に対応できる食器を用意したいものですね。汁椀は小さな手でも持ちやすく、安定して持てる糸底(ハマ)がしっかりついたタイプがおすすめです。保育所などでは以前から使用されているシリーズの碗ものには、糸底に切れ目が施されているデザインが多くあります。最近では洗浄後の水切りがしやすいとの反響で、家庭でもこのようなタイプの人気が出てきています。

この時期の子どもの気持ちからすると、食べる意欲が優った結果、スプーンを食器のほうに傾けすぎてしまい、重心が崩れて器からたべものがこぼれることもあるかもしれません。手を添えるということが習慣づかない時期だからこそ、主食などに利用する器には滑り止め加工、もしくはトレーに工夫がなされていると安定しやすいでしょう。スプーンに食べ物を乗せてお口に運べることがスムーズになると「一人で食べられたよ!」という成功体験にもつながりますし、注意されずに自分のペースで食事が楽しめることは子どもにとっても更なる自信につながるでしょう。また、乳児期でもお伝えしたことですが、スプーンでより食べたい量をすくいやすいように、食器の縁に立ち上がりのあるタイプが使いやすいでしょう。

箸の選び方

十分に手づかみ食べやスプーンやフォークを使いこなせることを優先的に支援し、その後にお箸の持ち方に移行していくことが上達への早道です。使いやすい箸の長さは、手の長さ+3cm程度。先端をかじったりしやすいので安全性に配慮された素材のものが望ましいです。持ち手は四角や六角形など手にフィットしやすいものがいいですね。先端に滑り止め加工されていると、毎日の食事以外でも「お豆つかみ」といった遊びのシーンでも活かせそうです。

細かいものがつかみやすい六角箸
成長に合わせた配膳と食器選びを

食器を選ぶポイント

トレーにおいた際に、手前にお茶碗とお汁椀という位置を子どもの目で認識させましょう。配膳は食べるマナーや栄養バランスを学ぶのにとても良いことです。成長に見合った栄養量を提供するために、成長に合わせた合わせた食器を用意しましょう。
(1)スプーンですくいやすいような工夫がされているか
(2)碗ものが手に取りやすい設計であるか
上記を満たすような中で園の雰囲気やカラーに合ったデザインを選ぶと楽しいですね。
底にイラストが描かれていれば、完食したときの声かけにも有効ですし、縁にデザインが施されていると、食べ物以外の色も目に入ってきて美味しさを引き立たせることでしょう。

お手伝いのしやすいコンパクトサイズ
ミニトレーは”おやつ”や月齢の離乳食期にも重宝!

トレーは一人分のランチョンマットのような役割ですが、異なるサイズを持っておくと使い方に幅が広がります。おやつの時だけは自分で運ぶといったお手伝いもサイズが小さければ実施しやすいです。また、洗浄する手間やストックスペースも省けるでしょう。

最後に

成長や発達に応じた選び方として述べてまいりましたが、大切なのは毎日衛生的な管理のもとで食器、食具を使い給食を提供することです。洗浄方法も施設によって洗浄機や乾燥庫の設定温度が違いますし、消毒に使用する漂白剤の種類も様々です。デザインだけで選ぶのではなく、日々の食器の衛生管理が現施設で対応可能かどうかも決定する前に検討してみましょう。

筆者紹介

隅弘子(子どもの食の専門家/mamaful代表)
一般社団法人日本こども成育協会食専科ディレクター
一般社団法人母子栄養協会幼児食/学童食/妊産婦食アドバイザー認定講師/管理栄養士
子育て中の母子を食からの視点で支援することを目的に「mamaful」として活動開始。子育て支援施設内での食事相談や離乳食・幼児食教室をはじめ、子育て支援ボランティア養成研修・専門学校講師などを務める。栄養学に発達心理などを組み合わせ、「食べる楽しさ」や「げんきを作る食べ方」を伝える活動を得意としている。